60代からの行政書士受験(1)
「もうやめた。試験は二度と受けない!!」
忘れもしません。この言葉を吐いたのは、行政書士試験を終え、自宅の玄関を入ったときの心の底からの叫びであります。正に精魂尽き果てたとはこのこと。結果がどうなろうと、このような世界には二度と足を踏み入れまいと、自分で固く誓ったことを覚えています。今まで受けたどの試験よりもハードでした。年甲斐もなく、還暦をとうに過ぎた老体が3時間に及ぶ一発勝負の試験を受けたのですから。とても「ボケ防止」などと呼べるものではありません。下手をすれば体調不良を誘発しかねず、心身とも限界ギリギリの状態ではなかったかと、今になっては思います。どうして1年間もの試験勉強をしてまで行政書士試験を受けるに至ったのかと問われれば、自分でもよくわからない何か衝動にかられた部分もあったように思いますが。
翌日にかけて予備校などは解答速報を発表します。記述式の部分を除く択一部分(240点満点)は154点とわかりました。この点数からこの後私がどうなるか、どんな状態に陥るかは受験した人には想像がつくと思います。あと26点で合格となるのですが、記述部分の解答(3問で60点満点)はよほど正解を書かない限り、点数が読めません。もうどうなろうと試験は受けないし、参考書など見たくもない。腰の高さにまで積みあがった予備校の教科書、参考書、問題集などを次から次へと紐でくくりました。その週の廃品回収に出すためです。頭の中に湧き上がる得体のしれない黒雲を、体を動かすことで振り払おうとしたのです。
しかしながら、この黒雲は簡単には消えてくれません。記述部分の自己採点を繰り返す自分がどうにもならないのです。「落ちた!」「いや、何とか30点は取れている」と。毎日毎日この繰り返し。挙句の果てには、あれほど「二度と受験はしない!」と誓ったはずなのに、なんと「スーパー過去問ゼミ(民法Ⅰ、Ⅱ)」を買ってしまいました。もう自分で自分がコントロールできなくなり、この気持ちを落ち着かせるには、受験勉強を再開するしかなかったのです。
その年は暮れも、お正月もありません。このような、今まで経験したことのない悶々とした日々をおよそ3か月過ごしました。合格発表の当日、ネットで自分の番号を見つけたときは、さすがに嬉しく、細君に早速報告。私以上に喜んでくれたことが何よりでした。1年間もそばで何も言わず応援してくれていたことに、感謝、感謝です。
さて、前置きが非常に長くなりましたが、このようなつらい思いをしつつも、還暦をとうに過ぎた老人が行政書士試験に約1年の格闘の末、合格しました。「運よく受かっただけ!」とのご意見もありましょうが、「運も実力のうち」とするならば、どうして合格できたのか、どうすれば合格できるのか、自分なりの分析と反省をこめて、次回以降書き綴ってみたいと思います。なお、私が書いたこの方法で行政書士試験に不合格となったとしても、私は責任を負えませんので、念のため。