高額な医療費負担のとき

 もうすぐ後期高齢者の領域に突入する団塊の世代にとって、心配なのが生活を圧迫する医療費負担の増加です。高齢化にともない、がん、心筋梗塞などの三大疾病等の罹患にともなう医療費負担増は避けられないでしょう。例えば、最近急増している前立腺がんの全摘手術費用は120~160万円、同放射線治療であれば150万円かかると言われます。しかし、保険適用の治療であればこの2割負担(現役並み所得者を除く。)で済みます。それでも、30万円前後の負担は大きいですね。でも、心配はいりません。健康保険加入者には、「高額療養費制度」というセイフティネットが用意されています。
ここでは、夫婦二人世帯でお二人とも「満70歳~満75歳未満」の方で、かつ所得区分が「一般(現役並み所得者と住民税非課税世帯等を除く。)」の方を前提としてお話します。
「高額療養費制度」とは、医療機関等の窓口で支払った一部負担金の金額が、同じ月内で一定額(個人ごと外来で18,000円、入院・外来では世帯合算で57,600円)を超えた場合に、申請に基づき、その超えた金額については負担しなくてもよいという制度です。
 ここで出てきました「申請により」というフレーズ。お役所は申請がないと自動的に支給してはくれません。ただし、自分で計算して自らが申請するのではなく、高額療養費に該当する世帯の世帯主宛てに「国民健康保険高額療養費の支給申請について(お知らせ)」が送られてきますので、「お知らせ」に同封されている申請書に必要事項を記入し、被保険者証等を持参のうえ、手続きすればよいそうです。この「お知らせ」は、診療を受けた月から概ね3か月後におくられてきます。「お知らせ」が来たら、忘れずに手続きをしましょう。申請期限は、診療を受けた翌月1日から2年以内です。

 それでは、「高額療養費制度」が適用される医療費の負担限度額はいくらになっているのでしょうか。ここでは、先ほど述べた夫婦お二人世帯で、お二人とも満70歳~満75歳未満とします。
①外来における限度額
 外来では、個人ごと、つまりご主人はご主人だけ、奥さまは奥様だけで計算されます。個人ごとに、同じ月での外来の一部負担金の合計が、外来の自己負担限度額18,000円を超えた場合(ここでは、所得区分が「一般」で、窓口では2割負担となっています。)、自己負担額は18,000円で打ち止めとなります。注意するところは、「同じ月」というところです。月をまたいだ場合は、同じ月内の支払だけで計算されます。
②入院があった場合の限度額
 同じ月に入院があった場合は、世帯合算という方法で、負担額が計算されます。ここでは、ご主人と奥様の当該月での窓口負担全部を合算します。例えば、ご主人が外来で合計22,000円支払ったとします。ご主人の実質の負担(高額療養費制度適用後)は、①でみたように限度額を超えていますので、18,000円となります(差額の4,000円は払戻し又は18,000円で支払の打ち止め)。この同じ月に奥様が入院され、一部負担金として84,000円支払ったとします。入院があった場合は、世帯合算で考えるため、限度額57,400を超える額が払戻しとなります。つまり、ご主人が実質負担した額(高額療養費制度適用後の実質負担額18,000円)と奥様が窓口で払った84,000円の合計額102,000円に対して限度額が57,600円となり、その差額44,400円が払戻しとなります。奥様の支払額のみならず、ご主人の実質負担も合算されるということです。ただし、保険診療外の高度先進医療や自由診療、差額ベッド代等は、高額療養費制度の対象となりませんので、ご注意ください。
③その他
 ①、②のほかにも、外来での年間上限額(144,000円)や3回以上の高額療養費の支給対象となっている場合の自己負担限度額(44,400円)などの自己負担軽減がありますが、ここでの説明は割愛します。また、満70歳未満の方、満70歳~満75歳未満の方と満70歳未満の方が同じ世帯にいる場合の自己負担額の計算方法、さらには満75歳以上の後期高齢者医療制度対象の方の自己負担限度額など、それぞれ異なりますので、詳しくはお近くの区役所の窓口でお尋ねください。

この項は、川崎市健康福祉局医療保険部発行の冊子「国民健康保険のしおり」からの抜粋と区役所保険年金課窓口での聞き取り等により、取りまとめました。