補助線大嫌い!(その1)
最近、脳の活性化(脳トレ)のために、中学受験生向けの算数問題(平面図形)に取り組んでいます。小学六年生を対象とした問題ですから、中学・高校で数学を履修した者としては、解けて当たり前のはずですが、歯が立ちません。というのも、私は数学が大嫌いだからです。それは、もう60年ほども前のことであり、その理由をここで告白しても叱られることはないと確信してお話します。
高校の授業で幾何学を習いました。担当の先生は、脂ぎった若い独身の小柄なかたで、いつも木製の大きな三角定規と分度器を抱え、教室に現れます。礼もそこそこに、その日の例題となる平面図を黒板に書いていきます。黙々とチョークの粉をまき散らしながら。一通り問題の平面図を書き終えると、何の前置きも説明もなく、「この問題を解くには、ここに補助線を引きます。」というや否や、赤いチョークに持ち替え、また粉を飛ばしながら太線で記入していきます。私たち生徒は必死に、ただひたすら書き写すだけです。そして一通りの解法の説明を終えると、また次の問題を書いていきます。次の授業でも、またその次の授業でも同様です。その補助線を引くにあたって、何かヒントがあるのか、どうして思いついたのか、私にはさっぱりわかりません。「意味ふみこ!訳わかめ!」状態です。
確かに、その補助線があることによって、例題が解けます。でも、なぜそこにその補助線を引くことを思いついたのか、もう少し、補助線を引くためのヒントやルールがあってしかるべき、といつも考えながら授業を受けていました。そのもやもや感を抱えたまま、期末試験を迎えることになります。結果は惨憺たるもの。すっかり幾何学が嫌いになりました。幾何学が嫌いになっただけでなく、数学全般が苦手となり、やむを得ず文系に進むことに。私の将来の選択肢の半分を奪った授業となりました。自分の能力のなさを、担当の先生の説明力不足のせいだと言ってはいけないのでしょうが、でも、もう少し補助線の意味を解説してくれてもよかったのではと思っています。
最近のYouTubeには、難関私立中学入試問題(平面図の問題)を解説した動画がたくさんアップされています。小学六年生にこの問題を解けというのかと思うくらい難問ですが、補助線さえ思いつけば、小学生にも解けないことはない問題です。ただし、数学嫌いの私にとっては、解説なしには一問も解けません。
ユーチューバーの中には、私がかつて教わった先生と同じように、理由もなく補助線を引く人もいますが、補助線について、もう少し丁寧に解説してくれる人もいます。しかし、何故、その補助線を思いつけたのか詳しくは語りません。ただ、その補助線の役割は、複雑に見える設問を、わかりやすい基本図形に変化させたり、基本図形から導き出される定理や性質を使って単純化することにあることについては説明してくれます。設問図形を因数分解するようなものでしょうか。
「補助線のヒントは設問に隠されている」とも言います。設問者は、受験生に対して基本図形の定理や性質を十分に理解しているかどうかを問うているから、その設問者の意図を見抜けばよい。つまり、この問題に隠されている基本図形や図形の定理・性質を浮かび上がらせるような補助線を考えればよい。と、理屈では分かるのですが。しかし、どうもしっくりしません。例題を解きながら、もう少し考えてみたいと思います。
ここで、例題を一問。あくまでも小学校で教えられている範囲内で解くことが前提です。
下図のように、半径が4㎝の半円上に、角CABが15°となるように点Cをとりました。この時、ACBで囲まれている部分の面積を求めなさい。円周率(π)は、3.14とします。
この例題の解説は次回とします。なお、補助線大嫌いで数学の苦手な人を対象としていますので、中学生以上のレベルにある皆様には無用の解説かもしれません。念のため。