揉めない相続のために
6月19日にご近所のシルバー会から、標記のテーマで講話を頼まれました。今回はその要旨を掲載したいと思います。
(講話要旨)
相続で揉める家族というのは結構金持ちの富裕層だと思いがちだが、裁判所に調停を申し立てた人を金額別でみると5,000万円以下の方が全体の8割を占める。また相続財産のほとんどを土地建物の不動産(例えば相続財産6,000万円、うち居宅4,800万円)となっているようなケースが一番もめがち。
このような事例で相続人が母と子供二人として、母が居宅4,800万円を相続し住むことになれば、子供二人が預貯金1,200万円を相続することとなるが、とても法定相続割合(母1/2、子がそれぞれ1/4)どおりに分割できない。仕方なく相続人3人で分け方を協議することになる。ところが、ここに相続人の配偶者までもが口を出し、さらには兄弟間で生前贈与に差があったとまで言い出して、話し合いはこじれたうえ、相続をめぐって兄弟が仲たがいすることも。
それもこれも被相続人たる親が生前に話し合いもせず、遺言も遺さずに放置した結果である。今の親世代はかつて「家督相続」を見てきたこともあり、何も言わなくても長男や長女を中心に、仲良く話し合ってくれるものと思い込んでいたからでは。しかし、今の子供たちに、その考えは通用しない。そこで、私たちは元気なうちに、相続でもめる種を遺さぬように対策を考えなければならない。
相続対策の構築には順番がある。一番目は相続人の確定、二番目は財産の確認、三番目は相続税の発生の有無。そして、残りの人生に必要な資金も忘れずに。今まで勉強してきた「エンディングノート」に加え、「キャッシュフロー表」をつくって財産の確認や今後に必要な資金を計算。あとは誰に何を遺すか、どのようにすれば家族が仲良く暮らせるかを考え、遺言にして、できれば公正証書遺言にして遺すこと。遺留分を侵害するような分け方であれば、どうしてこのように相続させたか、その理由を「付言」という形で遺言に書くことも必要。
遺言だけですべてを解決することはできないので、補充手段として生前贈与(暦年贈与、相続時精算課税制度、一括贈与)、生命保険の活用、家族信託等々を検討することも。といっても、専門的な知識も必要になる。その時は、一人で悩まないで相続専門の弁護士、司法書士、税理士、行政書士などに相談することが大事。
そして、最も大事なことは、これからのことを家族の間で良く話し合っておくこと、コミュニケーションをとっておくことである。
(栗平白鳥自治会 「いきいきサロン」にて)