終活の計は健康寿命にあり

 2022年の元旦を迎えて、後期高齢者になろうとする私たちには、考えたくなくても考えるべきことがあります。
 それは、私たちは、あと何年生きられるか、それまでに何をしておくかです。

「金融庁でも”人生百年時代を見据えて”と言っている。これからまだまだ寿命は長くなるし、先のことを今から心配しなくても」と言っておられるご同輩の皆様、確かに「人生百年時代」と言われますが、あと何年健康で生きられるのかということをまじめに考えなくてもよいのでしょうか。
 もっとも、金融庁は「これから百年も生きるということは、その生存期間に見合った生活費、医療費等が必要となり、何も対策を取らないと2000万円不足する」として、「長生きリスク」そのものについて説明したかっただけだと思うのですが。
「長生きのリスク」は、今回横において、まず直近のデータから現実を見てみましょう。

 今ゼロ歳の人が平均であと何年生きるかを示したものが「平均寿命」です。
一方、今〇〇歳まで生きた人が、平均であと何年生きられるのか期待値を示したものが「平均余命」と言われるものです。
この平均寿命や平均余命は厚生労働省が発表する「簡易生命表」で知ることができます。最新版は、令和3年7月公表の「令和2年簡易生命表」です。これによりますと、令和2年(2020年)時点の男性の平均寿命は81.64年、女性は87.74年です。
 また、令和2年時点で満70歳の男性の平均余命は16.18年、同女性の平均余命は20.49年、満75歳の男性は12.63年、女性は16.25年となっています。

 つまり、令和2年で満70歳となった男性は、70歳に16.18年を加えた86.18歳まで、女性であれば70歳に20.49年を加えた90.49歳まで平均で生きられる計算となります。満75歳となった男性は87.63歳、同女性は91.25歳まで。この年齢が毎年延びてきており、冒頭の「人生百年時代」という言葉を生んでいるのでしょう。
 これをみて、ご同輩から「団塊の世代なら、少なくともあと10年は長生きできるだろうから、余計な心配をさせるな!」をお叱りを受けるかもしれません。

 それでは、もう一つ別の指標を出してみましょう。それは「健康寿命」と言われるもの。これについて国では「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義しています。「日常生活が制限される」とは、「寝たきり」や「認知症」などにより、自立した元気な日常生活を営むことができなくなることを言います。いくら「平均寿命」や「平均余命」が長くなっても、健康寿命が短ければ、幸せな老後を過ごすことはできません。

 厚生労働省が3年おきに算出している健康寿命は、2019年(令和元年)時点で、男性は72.68年(平均寿命81.41年)、女性は75.38年(平均寿命87.45年)となっています。平均寿命と健康寿命の差が「介護を受けたり寝たきりなどで健康ではない期間」として計算され、この期間が男性では8.73年、女性では12.07年となっています。大雑把に言って、寿命が尽きる前の10年間は、自立して元気で健康的な生活を維持できていないということです。

 平均寿命(2020年)から10年を差し引いた年齢、男性なら72歳、女性なら78歳が自立生活上の寿命であり、平均余命を基準にしても大差はないのでは。また、ご自身の現在の体力や気力次第で、これより長短があるかもしれません。いずれにせよ、団塊の世代の私たちにとって、「先のこと」として放置できる時間的余裕はないのです。

 「一日の計は朝にあり、一年の計は元旦にあり、終活の計は健康寿命にあり」です。
人生の手仕舞い(終活)をしっかりして、残された時間を余裕をもって過ごしたいものです。