家庭菜園と物忘れと5S

 6月から7月にかけての家庭菜園は大忙しです。たった3坪の畑ではありますが、万願寺唐辛子、サツマイモ、弦ありインゲン、トマトそして枝豆が植わっています。

 万願寺唐辛子は支柱を立てて誘引してやることが欠かせません。成長の過程で、花芽ができると、そこから二股ないしは三股に分かれて大きくなっていきます。そのまま放置すると、枝葉が生い茂るばかりです。そこで、一番最初に花が咲き、実をつけたところ、つまり一番果のところで、大きくは三方向に幹を伸ばすように仕立てていきます。一番果以下の枝は全部切り落とします。その幹を風で揺さぶられないよう支柱に固定(誘引)してやります。次々と枝分けれするところに花芽が付きます。そのままにしていると小さな実ばかりたくさん付くか、実が落ちるかで、食卓にのぼる大きさにはなりません。そこで、枝分かれした生長点を花芽のついている枝ごと剪定します。将来収穫する実となる花芽だけを残し、それ以外は徹底的にハサミで切り落とします。ちょっとかわいそうな気もしますが、これが上手くできると一本でも結構収穫できて、一週間に一回は万願寺唐辛子の炒め物が食卓にのります。あとの作業は、日照りが続いた時の水やりと追肥でしょうか。

 次はサツマイモです。サツマイモ栽培で、初心者が最初に失敗する原因が肥料のやりすぎです。いわゆる「弦ぼけ」となって、まったく収穫できません。掘り起こしても大きな根だけとなります。窒素分が多いと弦ばかり生い茂り、芋ができないのです。半年ばかり、結構な面積の畑が占拠され、何も収穫できなかったときは、それはみじめです。
 一般には、玉ねぎなどが収穫し終わった畑に後作としてサツマイモを育てます。肥料を全く与えず高畝(たかうね)にしてマルチシート(黒いビニールシート)をかぶせ、シートに穴をあけ、苗を穴に差し込み、あとは殆ど放置です。簡単なようですが、苗を植える時期と苗を植えるタイミングが結構大事です。5月頃、ホームセンターや園芸店に行きますと、サツマイモの苗(つるの先端部分20センチくらい)を束にして売っています。普通、野菜の苗を買うときには、生き生きとして茎が太くて新鮮なものの方が良いのですが、サツマイモは違います。少し萎びたくらいのものが丁度いいのです。この萎びた苗を水にぬらした新聞紙でくるみ、ポリバケツに入れて一晩おきます。サツマイモは生命力が強く、水分を求めて葉の付けから根をだしてきます。ちょっとだけ根の先端部分が出たくらいの時が植えどきです。何もせず土に差し込んでも同じようなものと思うのですが、このひと手間で、高い確率で根付くのです。後の作業は、弦がのびて畝からはみ出したときに「弦返し」といって、畝の外に出た弦から根が出ないように、弦を畝の上に返してやるくらいでしょうか。ずぼらな性格の小生にとっては相性の良い作物です。今年は、これに支柱をたて誘引し、立体的に作ろうと考えています。日光が多く当たるよう縦に弦を伸ばしてやれば、きっと収穫量も増える「はず」です。

 次に、‥‥と言っていると本題に入れません。
このような作業には必要な小道具があります。作業用手袋、手脚絆(てきゃはん)、長靴、剪定鋏、アサヒモ、肥料、支柱、ネット、収穫袋等々。その日の作業によって用意する道具も違いますが、事前に用意することのできない性格の私の場合、当日大慌てです。前回どこにしまったか、思い出せないのです。片っ端から探しまくることに。運搬用のリュックサック、物置、玄関クローゼット、車の荷台・・・。毎回毎回探し物をするので、女房殿からは呆れられています。どうしてこうも物忘れがひどいのでしょうか。年のせいだと言って言い訳するのですが。
 しかし、よくよく考えると、最近に始まったことでもないので、どうも生来の自分のずぼらな性格からくるものなのでしょう。要は、しっかり整理しておくこと、作業が終わった後の整理整頓が身についていないのです。小学校であったか中学校であったか記憶にありませんが、達筆で「整理整頓」と書かれた半紙が額縁に入れられて、教室の前の方に掲示されていたように思います。そのことを今になって思い出し、その時は反省するのですが。

 これが工場に行きますと、「5S活動」として、生産管理システムの重要課題(現場改善の基本的活動)となっています。
 5Sとは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、しつけ(Sitsuke)の五つの頭文字のSをとって「ごえす(5S)」といいます。生産現場での無理、無駄などをなくし、生産活動を効率化するためには、整理、整頓、清潔、清掃が欠かせないことは良くわかります。そして、最後のSである「しつけ」が一番大事だと言われます。漢字で書くと「躾」です。身を美しくする。つまり、行いが身についていて、その仕草が美しいという意味なのでしょう。決められたルールを守る習慣を身に着けておけば自然と効率よく作業が進められます。作業手順だけでなく、その前後の整理整頓、清掃して清潔にしておくことも無意識にできるよう習慣づけておくことの大切さを現した標語です。この「5S」は、工場や事務の現場だけではありません。私たちの日常生活においても、とても大事なことと言えます。と、理屈ではわかっているのですが・・・。
 今改めて思うに、この歳になってもこれができないのは、「小中学校での「躾」が十分にされなかったことにある」といったら、当時の担任の先生方はなんとおっしゃるのでしょうか。