60代からの行政書士受験(8)

まとめに代えて

 還暦をとうに過ぎても行政書士試験に合格できるだろうか? そのような疑問を抱かれている高齢受験者の方々へ、少しでも参考になればと思って、受験スタートから試験当日までの1年間、自分のしてきたことを反省を込めながら書き綴ってきました。この方法が決して最善のやり方だとは思いませんが、一つでもお役に立つことがあったとしたら幸いです。
 行政書士登録をすませ、実際に開業してみると、肉体的にも精神的にも高年齢というハンディは大きいものがあります。もっと早くスタートしておくべきだったと思うことしきりです。このブログを読んで、もし自分も受験してみたいと思われるのでしたら、一日でも早いほうが良いと申し上げておきます。

 最後にこれだけはお伝えしたいと思うことを、三つ申し上げておわりにしたいと思います。

絶対無理をしないこと
 最初にも申し上げましたが、還暦を過ぎた高齢者には人生の先が見えてきます。これからの1年、1年には代わりがありません。体力面でも精神面でも無理ができない年代です。貴重な1年ですから安易な気持ちでは挑まないことです。受験するだけでも予備校等費用がかかりますが、開業にあたっても登録料、年会費、電話・パソコン・机・機材、ソフトの購入費等々で1~2百万円といった額の投資も必要です。開業後にすぐ収入があるわけでもありません。老後資金のことも考えておくべきですし、何よりもご家族の協力・応援がなくてはやれません。これらをよくよく考えてください。

自分のフィールドから離れないこと
 それでも挑戦したいと思われるのであれば、自分の戦うリングから絶対外に出ないことです。今まで何度も基礎が大事、重要論点が大事等々申し上げてきました。予備校の講師一人を決めて、その人が一番最初に言っている学習の領域、学習の仕方から離れないことです。その領域もAランクに絞ってください。時間が経つにつれてこの範囲で大丈夫だろうかと不安になり、ほかの予備校の講師の言っていること、参考書などについつい手を出したくなります。浮気は百害あって一利なしです。私も外に出て相当の時間を無駄にしてしまいました。自分のリングに相手を引き込むことはいいと思いますが、外に出てはだめです。自分のフィールドをしっかり固めましょう。それが合格への近道だと確信しています。

インプットからアウトプットへ
 受け身の学習はすべてインプットです。予備校の授業はもとより、過去問学習、短期の集中講義も、極論すれば模試の受験もインプットです。予備校の先生方は、口癖のように「インプットからアウトプットへ」と言います。なぜ、アウトプットが大事なのでしょうか。過去問などでインプットした知識は、頭の中に記憶として残るものの、これが形を変えた問題となって出題されたときに、この記憶だけではなかなか正解が導き出せません。つまり、問われている問題の本質を何も理解できていなかったということを示しています。どうすれば、本当に理解し問題が解けるようになるのでしょうか?
 白紙の上に、条文・判例などの重要テーマを一行書き、そのことについて今自分が知っていることを何も見ないで書き出してみてください。そこに書くことができた内容で今の自分の実力が分かります。インプットしたものをアウトプットできなかったら、何も理解できていなかったことになります。予備校の先生方は「想起力」といったりしますが、私は「アウトプットの力」のことだと理解しています。過去問を何度も繰り返すより、重要過去問において問われているテーマを書き出し、そのテーマについてどれだけ理解できているか、アウトプットしてみてください。小さなフィールドであっても、そこにしっかり根を張った知識となっていれば、未知の問題にも応用できます。「アウトプット力」こそ、真の実力です。