60代からの行政書士受験(4)

行政書士に必要な知識とレベル

 行政書士が実務の専門家であるためには何が必要かも考えておく必要があります。
先輩の行政書士は「先例のない事象について、法的三段論法を用いて、自分の頭で考え結論を導き出すことのできる実務能力が必要」と。つまり、「お客様や行政当局から提示された具体的事象(問題・課題)を法律・判例等にあてはめ、結論(最適解)を導き出すことができること。これができる行政書士かどうかで、単なる実務家か法律の専門家といえる行政書士か区別される!」と口を酸っぱくして言っていました。
 行政書士試験では、事象を法律に当てはめることができるかどうかを訊いてきますが、それは実務能力を有する行政書士には不可欠な法的思考力があるかないかを試していると思われます。
 それでは法的思考力を持つためにはどうするか。私の反省から言えば、単に条文を暗記しているだけでは思考力はつきません。重要条文について、この条文の法律要件は何か、法律効果は、と考えながら読むことは当然として、この条文の制度趣旨の理解が不可欠です。予備校の先生は、制度趣旨について時間の多くを使ってくれていないように思います。ここは自分で学習するしかありませんが、ここで手を抜くと、条文・判例を自分のものにできないし、法的三段論法も身につかないと思います。
 さて、予備校の先生方は、どの条文が大事か、どの判例が大事かは教えてくれます。教科書に記載がなくても、口頭で重要度ランクを教えてくれますから、ここはしっかりチェックしておきます。ただし、先生方は六法全書を開いて条文をチェックすることまではしません。大事なのはここです。条文は六法を開いて自分で必ずチェックします。重要判例は、判決日と事件名、判旨をエクセルで記録しましょう。これは憲法でも民法でも行政法でも大事です。判決日は後で並べ替えたりするとき便利です。予備校の教科書には条文の記載がないことがありますから、教科書に条文を書き込みます。私は六法全書よりも片手で持てる「ケータイ行政書士ミニマム六法」を使いました。教科書にも、このケータイにも徹底的に書き込みました。書くことで覚えますから。ここまで読むと、「還暦を過ぎた老人には無理」との声が聞こえてきそうですが、もう少しお付き合いください。
 次回は予備校のスタンスについても述べてみたいと思います。