遺族厚生年金と経過的寡婦加算

 終活の一環として、自分の亡き後、残された家族の生活についても考えておく必要があります。貯金もたっぷりあって、相続税が悩みの種と言われる方や自営業の方はここでは対象外とします。
 団塊の世代の方で、卒業後会社に入社、定年まで勤め上げたご主人と、専業主婦として長年ご主人を支えてきた二つ年下の奥様のお二人家族を前提に話を進めます。
 70代のご主人ですから、現在はご自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金、それに奥様の老齢基礎年金が収入(所得)となって、毎日悠々自適の老後を楽しまれていると想像しますが、いずれ寿命という避けられない終点がやってきます。平均寿命は男のほうが短いので、一般的には奥様が残されることになります。その時、今まで生活費を賄ってきた年金がいくらになるか、今から頭に入れて今後の生活をしなければなりません。
 ご主人が今までもらっていた老齢基礎年金は、ご主人の死亡とともに支給停止となり、老齢厚生年金は奥様の申請によって遺族厚生年金へと形を変えて支給されます。従って、これから奥様はご自身の老齢基礎年金と遺族厚生年金(経過的寡婦加算を含む)を受給して生活をしていくことになります。
 では、遺族厚生年金はいくらもらえるのでしょうか。結論を先に言えば、お近くの年金事務所か年金相談センターに直接出向いてお尋ねください。年金事務所によれば、手元に届く年金通知書等から計算する方法はないとのこと。ご主人の基礎年金番号が分かるものと、本人確認ができるもの(自動車免許証やマイナンバーカードなど)を持参してください。待ち時間を除けば、即答していただけます。とにかく年金は複雑で個々人の年金履歴等によってその額が変動します。
 しかし、そうは言っても何かしら方法はないのでしょうか。原則的なところから言えば、遺族厚生年金はご主人のもらっている年金の報酬比例部分に4分の3を乗じて求められます。つまり、支給されている年金のうち、定額の老齢基礎年金を除いた部分となる老齢厚生年金に4分の3をかけて計算すれば、概算額が出るはずです。従って、毎年6月に通知される「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」に記載されている「厚生年金保険」の額に、4分の3をかけて求められる金額が、遺族厚生年金の年額に相当します。
 ところが、老齢厚生年金には遺族厚生年金の計算基礎となる報酬比例部分以外のもの(経過的加算など)が含まれているため、その分過大に計算結果がでてしまいます。ですから、その程度の金額と考えて、正確には年金事務所でご確認ください。
 次に経過的寡婦(かふ)加算についてです。これは、65歳以降に初めて遺族厚生年金を受け始めた奥様に支給されるものです。昭和31年4月1日以前に生まれた方に限りますが、生年月日ごとに一定の金額が遺族厚生年金に加算して支払われます。これも年金事務所では、遺族厚生年金の内訳として自動的に計算されて出てきます。年金制度はたびたび変更され、世代間等で不公平が生じているところがあります。これを調整すべく、様々な経過的措置が取られています。詳しいことは参考図書をご覧になっていただき、ここではこういった加算があることだけ、知識として持っておけば十分かと思います。